米国債格下げの背景
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2025年5月16日:Moody’sが米国の格付けをAaa→Aa1に格下げ
米国の債務残高は約36兆ドル、財政赤字は高止まりが続き、長期的な債務持続性に懸念があるとしてMoody’sが格下げを実施しました。 -
過去の格下げ
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2011年:S&PがAAA→AA+(政治的デッドロックと債務上限問題が原因)
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2023年8月1日:FitchがAAA→AA+(財政悪化の見通しを理由)
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これら格下げは市場のセンチメントに影響を及ぼしますが、実際の債券市場のショックは限定的でした。直近では10年物米国債利回りは4.48%→4.56%へとわずか0.08ポイント上昇、市場の反応は比較的穏やかでした。
格下げ直後の市場動向:債券 vs. ビットコイン
先述の通り、10年債利回りの上昇は約1.79%(相対)にとどまりました。一方、ビットコインは一時102,000ドルまで下押しされたものの、直後に105,000ドルまで反発し、約2.94%の上昇記録。
この比較からは「米国債が安全資産として買われる一方で、ビットコインも不安定な局面でリスクオフ資産として振る舞った」とも解釈可能です。ただし…
ビットコインの「安全資産」性に関する研究
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Safe-Haven Performance in the Age of Bitcoin(Kansas City Fed, 2020)
1995~2020年の金融危機期において、10年物国債は一貫して安全資産として機能したのに対し、ビットコインはほぼすべてのストレス期間で株価との相関が正、かつ統計的有意ではない(むしろリスク資産に近い)ことが示されました。 参照元:kansascityfed.org -
最近の学術研究
2024年以降の研究では、パンデミック後やウクライナ危機など新興市場の混乱期において、ビットコインが分散投資手段として一定の役割を果たすケースも示唆されていますが、安全資産と断定できる一貫した証拠は未だ不足しています。
最新動向:なぜビットコインに注目が集まるのか
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投資家資金の流入
5月上旬、デジタル資産ファンドには5.5億ドルが流入(うちビットコイン関連に1.8億ドル)と、資金移動が活発化。 -
法規制の進展
安定コイン規制法案(GENIUS Act)審議や、CoinbaseのS&P 500採用など、制度面での追い風があります。 -
米ドルの弱体化と国際情勢
関税政策や対中緊張によるドル安期待が、非国家資産であるビットコインへの需要を刺激しています。
結論:ビットコインは「安全資産」か?
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歴史的パフォーマンス
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債券:危機時に株価と逆相関を示し、安定的リターンを確保。
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ビットコイン:多くの危機で株価と同じ方向に動き、リスク資産に近い挙動。
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直近の動き
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格下げ直後の相対パフォーマンスではビットコインが債券を上回る場面も見られたが、一過性のリバウンドとの見方も根強い。
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将来の展望
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投機資金だけでなく、分散・ヘッジ目的での長期資金が流入すれば、安全資産としての認知度が高まる可能性あり。
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しかし、信用リスクが存在しないわけではなく、ボラティリティの高さは依然として課題。
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まとめると、現時点でビットコインを「安全資産」と呼ぶには時期尚早と言えます。ただし、市場の流動性や制度整備が進む中で、中長期的に「デジタル・セーフヘイブン」としての役割を担う可能性は十分にあります。一方で、51% Attackは? デジタル貨幣としての実用性は?といった課題は懸念材料として顕在しています。投資家としては、米国債や金と同様に「分散ポートフォリオ」の一要素として、適切なリスク管理下でビットコインを組み入れるのが現実的だと思われます。
個人的には、純粋にビットコインが安全資産かどうかを考える対象になったことを嬉しく思う。
また米国株や日本株、その他の投資対象についても改めて考えさせられるいい機会を得ている。
完全なポジショントークであるが、国債や金と同様なリスクヘッジ資産として地位を確立し、
デジタル貨幣としての需要が技術的にも実用的にも進むことを願う。ビットコイン HODL!!
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