イーロン・マスクがOpenAIの営利企業化に異議
イーロン・マスク氏は、自身のAIスタートアップ「xAI」や元OpenAI取締役のシヴォン・ジリス氏とともに、連邦裁判所に対しOpenAIの完全営利化を阻止する仮差止命令を申請しました。今回の申請は、OpenAIと同社CEOであるサム・アルトマン氏、さらに技術投資家リード・ホフマン氏やマイクロソフトなどの関係者を相手取ったものです。
申請書では、「OpenAIがMicrosoftの利益のためにさまざまな企業形態をつぎはぎしたフランケンシュタインのように市場で活動してはならない」と主張されています。
提訴の背景と主張
マスク氏は2024年3月、サンフランシスコ州裁判所にOpenAIを提訴しましたが、その後訴訟を取り下げ、数か月後に連邦裁判所で再提訴しました。現在進行中の訴訟では、OpenAIが連邦の組織的犯罪取締法(RICO法)や反トラスト法に違反しているとされています。
特に注目されるのは、OpenAIとマイクロソフトが投資家に対し、競合他社への投資を控えるよう要請した点です。マスク氏側の弁護士はこれを「グループボイコット」として批判し、競争を阻害すると指摘しています。
さらに、OpenAIが過去に共有された競争上重要な機密情報を活用し続けている点も問題視されています。弁護士チームは、これが生成AI市場での競争を不当に歪める行為であると主張しています。
OpenAIとMicrosoftの動向
OpenAIは2015年に非営利組織として設立されましたが、2019年に「キャップドプロフィットモデル」と呼ばれる営利を制限したモデルに移行し、現在は完全営利の公益法人(PBC)への転換を進めています。この再編により、OpenAIはより多くの投資家を引き付ける一方で、非営利の地位を部分的に維持する計画です。
一方で、OpenAIの大口投資家であるマイクロソフトは、これまでに140億ドルを投入しており、生成AIの主要プレーヤーとしての地位を確立しています。生成AI市場の収益は今後10年で1兆ドルを超えると予測されており、企業間競争が激化しています。
マスク氏のxAIの進展
2023年7月に設立されたxAIは、独自のチャットボット「Grok」をリリースし、さらなる技術革新を目指しています。同社は10万個のNVIDIA製チップを購入するために最大60億ドルの資金調達を進めており、OpenAIを含む他の大手企業との競争を強めています。
マスク氏は「AI技術の民主化」を掲げ、xAIを生成AI市場のリーダーにするための戦略を推進中です。
今後の展望
今回の訴訟は、生成AI市場における競争の激化を象徴するものといえます。生成AI分野は企業の投資が急増しており、技術革新が続く中で規制当局の動向や市場環境の変化が注目されています。
連邦取引委員会(FTC)もAI開発者と主要クラウドサービスプロバイダー間の投資やパートナーシップを調査中であり、これが市場にどのような影響を与えるかが注目されます。今後の法的な決定や各社の動きが、AI産業の未来を大きく左右することになるでしょう。
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